ジーキル博士とハイド氏 (岩波文庫) とても有名な本だし、なんとなく内容は知っている。でも実際には読んだことはない。そんな本でした。
ものを書くわけだし、一度はきちんと読んでみようとページを開いたところ……普通に面白くて、あっという間に読んでしまいました!
古さは感じません。このお話の中に、どんなに時代が移ろったとしても変わらないものが、描かれているからかも知れません。
二重人格ものと思われがちですが、実はジーキル博士は二重人格ではないのです。
(かなり抑圧されてましたし、このままいけば変な薬なんて飲まなくても何処かで「ハイド」は生まれていたのかも知れないとは思うのですけれど)

ジーキル=善、ハイド=悪と思われがちですが、読んでみるとジーキル博士は善良とはいい難い人物です。
本の中でも描かれています。
ジーキルの中には善良な部分と悪の部分が両方ある。そして、ハイドは純粋な悪であると。
だいたい薬はなにもないところから「悪人」を作り出すわけではなくて、心の檻を揺さぶり、その中に閉じ込められている自分自身を解放するだけなんですから。

この本で驚いたのは、精神だけでなく外見も変化するというところです。
だからこそ、ハイド(ジーキル)は、心置きなく悪事をはたらくことができるのですね。どんなに悪事を働いても、目撃者がいたとしても、見た目はまったくの別人なわけなのです。
そして、はじめのうちは主導権を握っていたジーキルが、次第にハイドに支配されていく。
無理もありません。ジーキルは本当はハイドになりたかったのだから。
もうひとつ二重人格ものと違う点は、ジーキルの方でも、ハイドの存在をしっかりと感じ、ハイドが何をしているのかをきちんと心得ているところです。
本当の二重人格だと、第一の人格は第二の人格を知らないはず……ではなかったかと思うのですけど。
その上でハイドの引き起こす悪事を楽しむジーキル、そしてその結果彼が支払うことになった代償とは。

長く読みつがれている名作というだけあって、きっとこのお話に影響を受けた作品がゴロゴロ転がっているのだろうなと思いました。
私がこの作品を読みながらチラチラと頭の中に思い浮かんだ本はダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」です。
この作品は多重人格物ではありませんけれども、新しく発明された薬が、一人の人物の人生を根こそぎ塗り替えてしまうという点で、非情によく似ていると思います。
しかもはじめは素晴らしい変化(ジーキルにとっては素晴らしいものだったのでしょう)をもたらすと思われた薬が、最後に悲劇をもたらす、という点でも似ていたように思います。

アルジャーノンの作者ダニエル・キイスは「二十四人のビリー・ミリガン」など、多重人格物の作品も、多く書いてます。残念ながらそちらの作品も未読ですので、いつか読んでみたい一冊です。
2018/04/11(水) 21:34 記事URL