信太の狐 (日本の物語絵本) ポプラ社の「日本の物語絵本」の第7巻です。
このシリーズ、とても好きなんです。
日本の昔話が、美しい絵本になっています。
お話も、私好みなものばかりなんですよ。
今回ご紹介するのは「信田の狐」です。
この「信田の狐」
「葛の葉狐」だとか「信田妻」という名前でご存知のかたも多いと思います。
いわゆる異種婚姻譚に文類される昔話です。
そうそう、葛の葉は子ども向けの妖怪全集に狐の妖怪として載ってたりすることもあるかもしれません。

お話の舞台は泉州(現在の大阪府南部)にある信田明神。
摂津国(現在の大阪府北西部と兵庫県の南東部)安倍野の里に住む安倍保名あべのやすなが信田明神の神使である狐の子を助けたことからお話は始まります。
保名のご先祖は阿倍仲麻呂だそうですよ。

保名が行き倒れているところを美しい娘が助けてくれるわけですね。
ええ、よくある話ですよこれ。
しかもこの娘があんまり親切だったために、保名は七年間も、家に帰らず、娘の家に居着いてしまいました。
息子も生まれます。
「安倍の童子」と名付けられますが、この童子、後にかの有名な安倍晴明になるわけです。
この小さな男の子は、まだまだ後の怪しさなんて露も見せず、元気でやんちゃな男の子です。
とても利発で父の真似をして、腕組みをして空を見上げ、星を読んだりします。
父の保名は家に伝わっている「天文道」の本を読み解いて陰陽道の扇を極めようとしていた人物です。

幸せな月日が流れますが、ある日、童子はうたた寝する母が狐の姿になっているところを見てしまいます。
異種婚姻端のパターンなのでしょうが、正体を見られたら、一緒にいられないのです。

恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる信太の森のうらみ葛の葉
(恋しくなったなら訪ねておいで 泉州信太の森の悲しみに暮れた葛の葉を)

という別れの歌を残して、姿を消してしまうのです。

短歌というのは、奥が深いですよね。

「うらみ」と言う言葉。
これは恨みではなく未練だとか、悲しみだと思います。
それから葛の葉。葛の葉の裏は白いのだそうです。
自分がいつも家族に見せていた表の顔と、神使である白狐の顔。二つの顔が葛の葉という名前に込められていたのかもしれませんね。
もしかすると、現実と、妖怪たち怪しい世界。そんな二つの境目に経つ母親自身の危うさも、表現されているのかもしれないな……
と、勝手に推測した私でした。
2018/06/01(金) 14:08 記事URL