わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) 2005年発表。同年のブッカー賞最終候補作。

作者であるカズオ・イシグロさんは、言わずと知れた2017年のノーベル文学賞受賞者です。
このお話、レビューをしようと思うと、どこまでネタバレして良いものか……と、悩んでしまうお話です。
今回は、あまりネタバレしないように書こうと思います。
まずは設定でしょうか。
私は読み始めてから早い段階でこのお話の設定はわかってしまったのですけど、それはSFとかエンタメ小説で取り上げられることの多い設定だからかなと思います。
決してめずらしいという設定ではないかと思うのですね。
文学。と思って読んでいると、しだいに「え?」「は!?」って、なるかもしれませんけど。

このお話の特徴は、その「え!?」な設定を、あくまでも丁寧にその状況下に置かれた者たちの「日常」を描くことで次第に浮き上がらせていくところだと思います。
だから、読むのには結構な気力が要ります。
読者は彼らとともに(設定を知らずに読むことによって)彼らの日常を経験したからこそ、その設定の異常さ、残酷さを自分のことのように感じ取ることが出来るのだと思います。
カズオ・イシグロ氏は、この作品の持つテーマを露わにして読者にゴリ押しするのではなく、丁寧に丁寧に些末な日常を読者に体験させていくことで、テーマについて考えさせるようとしたのではないでしょうか?

こんな未来はありえない。
私はそう思います。
これから先、何年後も、何十年後も、何百年後も、そう思っていられるような世界であった欲しいです。
2018/02/21(水) 09:01 記事URL